鳥の成長と換羽: 定義



このサイトで用いる専門用語の定義


細かい説明は後述することにし、まずは用語の定義を示します。 ここでは、識別時に必要となる専門用語、および 鳥の成長段階に応じて用いる専門用語を挙げます。  目的は、このサイトで使用する用語で混乱をきたさないようにするためですが、忘れっぽい自分のためにまとめておく事が 秘密の目的です。

定義は英語の用語を基準に、下記の参考文献から調べました。 用語の和名は、通常の辞書等 (リーダーズ英和辞典や 広辞苑など) を用いて英語から和訳して当ててありますので、信用できません (弱 !!!)。   あくまで、現在このサイトにおける定義とします。 また、定義の説明は私個人の言葉を用いています。  正確な日本語の定義を知りたい方は、鳥類学辞典を参考にされるとよいと思います(私にゃ〜高い!!)。

このサイトの定義と前提してはありますが、なるべく正確を期したいと思っております。   間違った用語の使用や定義の解釈が見られたときは、ご連絡をお願いいたします。


はね

羽衣 (Plumage)
鳥がまとっている羽毛のことで、つまりはどんな服装をしているかということ。
大羽 (Contour)
体の外を覆う羽で、軸があり、木の葉のような外見をしている。 一般的に想像される"羽"。
綿羽 (Down)
大羽の内側で体を覆っている、保温機能が高く、やわらかい羽。 大羽のような軸がない。 雛はまず、 この綿羽のみで体が覆われる。 布団や枕に最高。
換羽 (Molt)
羽毛が生え変わる生理的現象。


成長段階および季節における羽衣の呼称


雛綿羽 (Natal Down)
雛のまとう羽衣。 綿羽から成る。
Juvenal Plumage
幼鳥のまとう羽衣。 Natal Plumage の次の段階。 大羽が発達し、飛翔可能。
非繁殖羽 (Nonbreeding)
一年に2回換羽する種において、その非繁殖期にまとう羽衣。 大抵、色彩や模様、装飾が、 繁殖羽と比較して地味。
エクリプス (Eclipse)
非繁殖羽とほぼ同義。
基羽 (Basic Plumage)
その種の基本の姿と位置付けられている羽衣。 通常、一年に2回以上換羽する種においては、非繁殖羽と同様の羽衣を示す (カモのメスでは逆)。
繁殖羽 (Breeding)
一年に2回換羽する種において、通常その繁殖期を含む時期にまとう羽衣(コオリガモは繁殖活動期に 副羽をまとう)。
交代羽 (Alternate Plumage)
一年に2回換羽する種において、基羽と相対する羽衣。 通常、繁殖羽と同様の羽衣を示す(カモのメスでは逆)。
副羽 (Supplemental Plumage)
第三の羽衣。 コオリガモは年に3回の換羽を行い、四月に獲得して繁殖期間中にまとう羽衣を、このように呼ぶ。


成長段階における鳥の呼称


雛 (Chick)
専門用語ではなく一般的な用語と思わる。 このサイトでは、孵化後からJuvenal Plumage に換羽するまでの 時期を指すこととする。
Hatchling
孵化したての雛。
Nestling
孵化してから巣立ちまでの期間にあたる若い鳥。
Fledgling
巣立ち後から、親から独立するまでの期間にあたる若い鳥。
幼鳥 (Juvenile)
Juvenal Plumage をまとった若い鳥。 親からの独立/非独立は、定義と関係なし。
若鳥 (Immature)
親から独立しているが、まだ繁殖能力を得ていない若い鳥。
一年目 (1st Year)
おおよそ生まれてからの一年間を指すが、羽衣と換羽時期を基準とし、換羽の周期が2巡目に入るまでの時期を指す。  主に、成熟に2年以上を費やす種に対し、若鳥と成鳥との区別を明確にするために用いられる用語と思われる。

例) 幼鳥→一年目冬鳥(巣立ち後、最初に迎えた冬)→一年目夏鳥(孵化翌年の夏)→二年目冬鳥(2度目の冬)…→成鳥
二年目 (2nd Year)
一年目の次に来る一年間。
成鳥 (Adult)
生殖能力を得てから、死ぬまで。



鳥の年代、羽衣の決定法


羽衣(鳥の服装)に強く関連した鳥の年齢の呼称は、かなりややこしいようです。 特に一年目、二年目という 呼び方はややこしく、私自身、よく混乱するので、少し調べてみました。  まず、混乱の原因の一つは、年齢の分類体系がひとつに統一されてないことが理由として挙げられるようです。  以下に3つの分類体系を紹介します。

Life-Year System
巣立ちからの一年間を"一年目"とし、以降、成鳥に至るまで二年目、三年目と呼ぶ。 羽衣の発達の段階により 分類しているが、換羽の時期とは必ずしも一致していない。 つまり、新たな換羽が始まっていなくても、羽の 成長段階により生じる外見上の違いが、識別上の基準となっている。 本サイトで使用している定義。


Calendar-Year System
誕生からその年の12月31日までを一年目 (1st calendar year / hatching year) とし、翌年の12月31日までを 二年目 (2nd calendar year) とする。 本サイトでは使用しない。


Humphry-Parkes System
換羽によって得られる羽衣の種類により識別。 羽衣の実質的な区別が目的なので、本来、 上記のふたつのシステムとは別物。


 以上、定義とその説明でした。 次の項では、実例を示します。

→実例1:ナキハクチョウ



参考文献

  1. Baldassarre, G. A., and E. G. Bolen. 1994. Waterfowl Ecology and Management. John Wiley & Sons, Inc., New York.


  2. Bellrose, F. Chapman. 1980. DUCKS, GEESE & SWANS OF NORTH AMERICA. -3rd ed. Stackpole Books, Pennsylvania.


  3. Elphick, C., J. B. Dunning, Jr., and D. A. Sibley (Eds). 2001. National Audubon Society. The Sibley Guide to Bird Life & Behavior. -1st ed. Alfred A. Knopf, Inc., New York.


  4. Gill, Frank B. 1994. Ornithology. -2nd ed. W. H. Freeman and Company, New York.


  5. Sibley, D. Allen. 2000. National Audubon Society. The Sibley Guide to Birds. -1st ed. Alfred A. Knopf, Inc., New York.