2007年12月、機会あって北海道へ上陸。北海道には、日本ではそこにのみ生息する種や亜種がいる。 さらに冬には、北のロシアからここまで冬越しに渡ってくるものたちもいる。 いち鳥見人として、これが興奮せずにいられるだろうか? てなわけで、この場では北海道で出会った鳥たちを番外編として紹介することにした。
札幌 西岡公園
札幌で探鳥といえば、まずは西岡公園であろう。都心の近郊に位置しながら、豊かで多様な環境を
保っているようだ。この公園の中心にある水源池は明治時代に作られ、市民に生活水を供給していたらしい。
今ではその役目も終わり、ただ静かに水をたたえている。いや、多くの生き物たちにすみかを、
人々には憩いと安らぎを与えつづけているのだろう。
そんな魅力的な公園へ導いてくれたのは、札幌市に在住のH氏であった。
日本では北海道にのみ生息するハシブトガラ、それにヤマゲラやオオアカゲラなど、
私のまだ見たことのない種を探すのにうってつけの場所として、誘っていただいたのだ。
嬉しいことに、晴天に恵まれた。西岡公園は雪におおわれ、住宅地の中にひっそりと埋もれてる。H氏とともに
敷地内へむかう。すると、印象ががらりと変わり、生き生きとした森の息づかいが伝わってくる。いい場所だ。
さっそく、わきの水路からミソサザイの地鳴きが聞こえてくる。この鳥はカナダの温帯雨林に
かなりの高密度で生息しているので、私にもとても馴染みが深い。
やがて、水源地が見えてくる。もしかしたら水鳥にも出会えるのでは、と期待もしたが、さすがに
水面は凍っていて、けものの足跡のほかには生き物のけはいは感じられない。
池の周囲をめぐる小路をすすむ。H氏は立ち止まっては木とその周りを調べはじめる。それらの木々の幹には、
キツツキによって大きな傷跡がつけられている。なんと、あのクマゲラの食痕だそうだ。
H氏は食痕のある木の根元のあたりを調べて、今年の冬はまだここに訪れていない、と診断される。
なるほど、採餌していれば、白い雪のうえに木くずが散らばるわけだ。
子供のころから夢にみるクマゲラを見れないのは残念ではある。まあ、夢は先にとっておくことにしよう。
さらにしばらくゆくと、空き地に出る。空き地の一角から、にぎやかな鳥の声が聞こえてくる。
そこにはえさ台が設置されており、森の小鳥たちがひっきりなしに訪れている。おお、これは好都合だ!
日本では北海道でのみ見られるハシブトガラをまだしっかりと見ていない私は、
じっくりと観察したいと思っていたのだ。コガラととても似通っているようだが、区別できるだろうか?
えさ台は、すばらしく繁盛している。期待どおりにカラ類の天国になっているだけでなく、油脂を目当てに
キツツキの類も集まってきている。まさに狙いどおりの場所だ!
さて、何が集まってきているかというと…
お馴染みのシジュウカラ。お馴染みと言っても、北米には住んでいない。 馴染みのものは気にもならぬが、離れりゃ妙に恋しくなる。 久しぶりに出会って、感動は思ったよりも大きかった。こいつは野太いネクタイをしているので、オスであろう。 それにしても、なんとも美しい鳥ではないか。背中の淡いやまぶき色が洒落ている。
これまたお馴染みのコガラ。本州ではなんの苦もなく他の種と区別していたが、ここではそうはいかない。 お目当てのハシブトガラが非常に似通っているからだ。ええと、見た目の違いでは、頭にツヤがない、 くちばしは白っぽくない、つばさの白が目立つ…か。
そしてこれが、お目当てのハシブトガラ。なんだ、ほとんど違いがないではないか。 しかし、言われてみればくちばしは太めで白っぽい。つばさの白色も、あまり目立ってない感じがしなくもない。 頭の光沢は、この光の状況では確認できそうもない。ひぃぃ、これは、玄人でもすばやい判断は難しそうだ。
こちらはヒガラ。しかし、こうして並べてみると、よくもまあ、似たようなものたちがそろっているものだ。 非常に不覚だが、しばらく彼らの存在に気づけないでいた。よくみりゃ大分ちがうのだけれど。
カラ類最後のとりは、ヤマガラ。カラ類にしてはえらく鮮やかに感じる。この鳥を見つけると、
むしょうに嬉しくなるのは私だけではあるまい。カラ類の中では、シジュウカラが戦士にあたるのに対し、
ヤマガラは策士にあたるらしい(なんのこっちゃ)。
そんなわけで(どんなわけで!?)、カラ類はこの場で見事にすべてを抑えられたようだ。