鳥の成長と換羽: 実例2



年に二回の換羽をする鳥の例

 同じような水鳥でもガンやハクチョウと違い、カモの仲間は通常2回の換羽を一年のうちに行います。 換羽の時期は 種類や雌雄の違いで異なってきますが、カモのオスでは繁殖羽の期間が長く、非繁殖羽の期間が非常に短いのが特徴と 言えるでしょう。

 誕生してから繁殖に至るまでにかかる期間も、種類によって違ってきます。 水面ガモコガモや  アメリカヒドリ、  オナガガモなど)は通常、  誕生から翌年、つまり一年以内に繁殖が可能になります。 対してオオホシハジロ  などが属する潜水ガモでは、繁殖まで2年かかる種が多いようです。  さらに、海ガモとしてしばしば区別される仲間は成熟に2年を要し、北米で繁殖する ホンケワタガモでは3年目以降での繁殖のみが報告されています。




juvenile

 上のグラフは、マガモのオスの年代グラフです。 マガモは他の潜水ガモと同様、通常は一年目で繁殖活動に入ります。  夏の終わりに第二回目の換羽が始まり、部分的に羽毛が生え変わります。 このときに獲得する羽衣は、見かけ上幼鳥と よく似ているらしく、残念ながら私は比較できる資料を持っていません。 図鑑でも、幼鳥とB I を同じものとして扱って いるので、よほど区別が難しいのでしょう。 私のサイトでも、この時期を含めて"幼鳥"として扱っていきます。
 続いて初冬に第三回目の換羽が起こり、これにより繁殖羽を獲得します。 このA I (Alternative Plumage I) は、当サイトでは A II とともに"繁殖羽"として扱っています。 A II との最も顕著な違いは、A I の段階ではまだ幼鳥時に獲得した風切羽を 保持しつづけている点にあります。

basic plumage

 メスが抱卵期に入ると、オスは別の場所へ移動し、換羽を始めます。 年に2回の換羽を行うマガモですが、 全ての羽を入れ替えるのはこの時期の換羽です。 ほとんど全てのカモ目の鳥に共通することですが、やはり例外もあり、 アカオタテガモでは2回の換羽で2度とも、 風切羽を含めた全てを換羽します。 カモやガン・ハクチョウの仲間は一時に風切羽を交換するので、この時期には 飛べなくなります。 下のグラフはマガモのメスの年代グラフです。 オスとメスの換羽の違いはこのタイミングにあります。 メスでは B II への換羽は春先、繁殖期の前に起こり、繁殖活動中はより地味な羽衣で過ごします。




alternative plumage

 こうして得た、地味な見た目の非繁殖羽:B II は、2ヶ月あまりで再び新調され、結果 繁殖羽:A II を獲得します。   そしてカモのオスたちは、冬の越冬地で再びメス争奪戦を始めます。  マガモの換羽についての情報は、 "とり観察記"の"マガモ"でも取り扱ってます。




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参考文献

  1. Baldassarre, G. A., and E. G. Bolen. 1994. Waterfowl Ecology and Management. John Wiley & Sons, Inc., New York.


  2. Bellrose, F. Chapman. 1980. DUCKS, GEESE & SWANS OF NORTH AMERICA. -3rd ed. Stackpole Books, Pennsylvania.


  3. Sibley, D. Allen. 2000. National Audubon Society. The Sibley Guide to Birds. -1st ed. Alfred A. Knopf, Inc., New York.