アメリカムナグロ (American Golden-Plover): Pluvialis dominica

A. Golden-Plover
Barrow, Alaska (2 July,2005)

鳩とほぼ同寸、黄金をちりばめた陣羽織を羽織った、凛々しい出で立ちの千鳥ぞ。

金色の戦士

このものは雅びた出で立ちをしておる。黒地に白帯、背には黄金の小札。 派手な色彩を上手に着こなし、まことに倭人好みの意匠だ。
多くの鴫や千鳥と同様、このものも極北の凍原(ツンドラ)で子育てをおこなう。今回は、子育てを営む 胸黒【ムナグロ】の姿を垣間見てみようぞ。

alart Barrow, Alaska (2,July,2005) 凍原を闊歩しておると、よく彼方より鋭い警笛のごとき鳴声を耳にする。
巣に近づいてくる敵を警戒する胸黒だ。声のするほうへ視線を向けると、ひときわ高い場所を陣取り、 こちらを監視する胸黒を見て取ることができる。

胸黒は夫婦にて子育てをする種族。前哨で警戒線を張っているのは夫であり、夫の警鐘を受けると、 妻は速やかに温めていた巣から離れる。

broken wing 1 broken wing 2 broken wing 3 broken wing 4
Barrow, Alaska (3,July,2005)
彼らは敵に姿をさらけ出し、己に引き付けて巣から敵を離そうと試みる。 それでも敵が真っ直ぐに巣へと近づいてゆくと、やむなく必殺技を繰り出す。

左の写真は、巣にさらに近づいた予に対し、必殺技『翼が折れちゃった』を繰り出す胸黒。 傷つき、飛べなくなった振りをして、敵を己に引き付ける!!

己をも危険にさらす、究極の大技。
この技は大抵の鴫・千鳥に共通の必殺技。鴎【カモメ】など他の種族でも、習得しているものたちがいる。
injury Barrow, Alaska (3,July,2005) ついに地べたに這いつくばった胸黒。間近でここまで虚仮にする態度に出れば、 予も武士の端くれ、このものに対して打って出ざるを得なくなるな。
threat? Barrow, Alaska (2,July,2005) これはまた、新たな技であろうか?
敵を引き付けようとする技には変わるまいが、怪我して見せてるというよりは、脅してるように見えるが?
翼や、広げた尾羽の縞模様が、予に眩暈を与える。げ、幻術か…。
ええい、おのれ妖怪め!!
eggs Barrow, Alaska (2,July,2005) これが、彼らが必死になって守護する巣。土壌のむき出した場所に苔や蘚苔を 敷いた、簡素なもの。これもまた、保護色に守られており、容易には見つけられぬ。
chicks Barrow, Alaska (2,July,2005) 胸黒の雛たち。なんと、鮮やかな若葉色であろうか。親鳥たちが必死になり 保護するのも、頷けるではないか。宝のような雛たちであるな。

この緑色もまた、若葉の茂り始めた凍原の景色に没するための保護色であろうの。