鳥の成長と換羽: 実例3



成熟に数年を要する鳥の例

 鳥のなかには、成熟するまでに数年を要する種も少なくありません。 カモメの仲間は寿命が長く、また成熟にも数年を 要する、一年に2回の換羽を経験する鳥です。 成鳥としての羽衣を得るまでにかかる年は種類によって異なり、その年月は 体が大きいほど長くかかる傾向にあります。 小型のカモメ、例えばユリカモメや クビワカモメミツユビカモメなどは成熟に 2年間を費やしますし、それより大型の カモメカリフォルニアカモメは3年間、 大型のシロカモメワシカモメですと4年間を必要とします。
 ここでは、成熟に4年を費やすアメリカオオセグロカモメ を例にとって見ていきましょう。




1st winter

 まずはじめに、ここに紹介するカモメの換羽については、 Gull Identification Website からの情報に基づいている ことをお断りしておきます。
 さて、"Gull Information Wabsite" では、幼鳥は冬の始めに一年目のAlternative Plumage へと換羽する可能性を挙げています。 位置付けとしては "夏羽" ということですが、換羽は実際には時間をかけて段階的に進んでいて、 時期ごとに外見的な特徴から "冬羽" や "夏羽" を識別する方法が確立しているようですので、 当サイトではその方針#1に従って記述していきます。
 グラフをみて気づくのが、冬の換羽時期の長さです。 私の観察経験からですが、換羽の進行具合はかなり個体間でのばらつきが大きいようです。 ちなみに、冬に向かうこの時期に、カモメは完全な換羽(全ての羽毛の生え変わり)を体験します。 他方、春の換羽では、頭や胴体などで、部分的に 生え変わります。

#1: The Sibley Guide to Birds に基づく    


2nd winter

 前項で "換羽時期の特定は難しい" と述べたものの、カモメの外見からの年齢判別法は確立されています。 嘴や虹彩(人でいうと白目の部分)も 判別の大きな助けとなりますが、より重要なのは、背中や翼の色や模様の変化にあるようです。 換羽の周期は、1年目のA1 を獲得してから後、 同じサイクルを繰り返すようです。


alternative plumage

 左の個体は、おおよそ成鳥と似通っていますが、嘴の黒斑と風切羽の先端に並ぶ白斑に違いが見られます。  3年目の冬鳥と思いますが、資料から察するところ、通常3年目の個体は大雨覆羽(背中の灰色部分の、下の淵の部分) がほぼ黒色なようなので、もしかしたら4年目の冬鳥かもしれません。
資料の確認不足ですが、アメリカオオセグロカモメには4年目の冬羽が存在する、というのをどこかで呼んだ記憶があります。 (定かな情報ではないですが…)


alternative plumage

 非繁殖羽の成鳥です。 普通、カモメの非繁殖羽は頭部に顕著な特徴があり、引っ掻いた後、ミミズの張った後のような 暗い模様が現れ、その模様は種により特徴があります。 アメリカオオセグロカモメはこの模様がほとんど現れませんが、 それでも目の周りや頭部の一部分に暗色が現れます。 ちなみに繁殖羽では、大型のカモメではみな真っ白な頭部になります。




参考文献

  1. Elphick, C., J. B. Dunning, Jr., and D. A. Sibley (Eds). 2001. National Audubon Society. The Sibley Guide to Bird Life & Behavior. -1st ed. Alfred A. Knopf, Inc., New York.


  2. Sibley, D. Allen. 2000. National Audubon Society. The Sibley Guide to Birds. -1st ed. Alfred A. Knopf, Inc., New York.


  3. Steve Hampton & Don DesJardin. Gull Identification Website.
    URL: http://www.geocities.com/RainForest/Canopy/6181/gulls.htm