ガン・カモのなかま


それぞれの特徴

ともに同じ科に属するカモとガンですが、その生態的な、または形態的な違いに迫ってみましょう。  まず、下の二枚の写真を比較してみてください。

Mallard Canada Goose

左がカモ、右がガンです。 う〜ん、形状で言えば、両者ともよく似てますね(笑)。  写真を見せた後にいきなりサイズの話しを持ち出すのはインチキですが、ぱっと見ですぐ気づくのが、大きさのちがいです。  ガンのほうがカモより大きいです。
その他の主な相違点は、下記に表にしてまとめてみました。

特徴

ガン

カモ

ふ蹠の模様網目状うろこ状
食性主に草食性雑食〜肉食性
雌雄単一形主に二形性(一部は単一形)
換羽年一回年二回以上

上から順に説明していきましょう。 
まず、『ふ蹠』というのは、鳥の足のスネのような部分 (正確には足の甲に相当します) を指します。  足のうろこの模様が、ガンとカモではちがう ということです。

何を食べてるか、が食性です。 ガンは主に陸上の植物を食料としています。  虫なども食べますが、食料全体の割合からいうと、ほとんど草食性といってもよいでしょう。
他方、カモのなかまは種類によってもさまざまです。 
マガモハシビロガモなどは 水辺の藻やプランクトン、虫などを食べる雑食性です。  この仲間は 「Dabbling Duck」 と呼ばれ、水面を嘴ですくうように採餌したり、または逆さまになっておケツまるみせで 採餌します。 
これに対して、魚介類や底生動物を中心とした肉食生活を送るのが、「Diving Duck」 と呼ばれる スズガモアイサ、 そして 「Sea Duck」 と呼ばれる ケワタガモシノリガモたちです。  いずれも、水中に潜って採餌します。
また、繁殖期や成長期のカモは、動物性のタンパク質を多く摂取するのに対し、ガンのなかまは植物からほぼ栄養のすべてを 補っています。

雌雄が単一形か二形性か、というのは、雄と雌の、見た目や鳴き声に違いがあるかどうかということです。  ガンはオスとメスの見た目が一緒で、カモは大抵、オスとメスの見た目がちがいます。  カモの中には、カルガモのように雄も雌も一緒のものもいます。 そのようなカモは、基本的に南の温暖な場所に多いようです。

最後に『換羽』について。 これは羽や羽毛の生え変わりを意味します。  ガンは年一回の衣替え、カモは年二回かそれ以上の衣替え  (コオリガモは年三回)をおこないます。
ガンの場合は単純で、年一回の衣替えで、一年を通じて同じ羽衣を纏います。
カモの場合は、年に二回の衣替えで、多くの種が2種類の羽衣を着分けします。  普段は派手な姿 (特にオス)、晩夏の飛べない一時期は地味な姿になります。 この地味な羽衣は、エクリプス  (非繁殖羽) とも呼ばれています。
繁殖羽 / 非繁殖羽の違いについては、 ウンチクの"鳥の成鳥と換羽" の章で、気合を入れて扱っています。 また、「とり観察記」 のマガモも参考にして下さい。

参考文献

  1. Baldassarre, G. A., and E. G. Bolen. 1994. Waterfowl Ecology and Management. John Wiley & Sons, Inc., New York.