さて、賑やかだったえさ台をあとにし、先へすすむ。すこし先の林のいただき付近にムクドリ大の鳥がちらほらと見える。
なにかと思えば、ツグミである。ツグミといえば、開けた地面でよく見かけることはあったが、林の木の上というのは
あまり経験にない。休息は枝のうえでとるものなのだろうか?そんな疑問を抱きながら歩みをすすめてゆく。
H氏がつぎに案内してくれた場所は、ヤマゲラの巣のある場所だった。運がよければ、この付近でヤマゲラ自身にであえるかもしれない。
期待に胸をふくらませながら探していると、林の奥のほうからキツツキの木をつっつく音が聞こえてくる。
目をこらして探しつづけると、朽ちた木の根元あたりに緑色の鳥がみえかくれする。おおお、あれだ!
本州でよく目にしたアオゲラは、木のひくい位置で採餌しているのをよく見かけた。姿がとてもよく似たこの鳥も、また似たような
嗜好を持ち合わせているのだろうか?
森の忍者、キバシリも健在。 |
期待どおりの収穫にほくほくしつつ、H氏の案内にしたがってさらに先へすすむ。
しばらくすすむうちに、つもった雪の厚さが増してくる。するとH氏は、背中の荷袋から西洋風のかんじきを二組とりだし、
そのうちの一組を私にわたすと、自分はもう一組をはきはじめる。これは楽しそうだ!
かんじきは快適に我々の歩をすすめてくれる。小路は丘の斜面を登りつつ森のなかへと私たちを誘ってゆく。
森はしんとしていて、踏みしめる雪のきしむ音だけが聞こえる。木々のすきまから顔をだす空は青く、
空気は冷たく冴えわたり、気持ちがよい。
座るのに都合のよい倒木を見つけて、小休止をする。H氏は倒木のうえに敷物をしいて濡れずにすむようにし、
水筒から暖かいコーヒーをカップにそそぎ、渡してくれる。なんと素晴らしく準備のゆき届いていることか!
鳥見をいかに快適に楽しくしようかというH氏の心配りは、ぜひとも見習わせてもらわねばなるまい。
そんな関心を抱きつつコーヒーをちびりちびりしていると、うえのほうからコツコツと枝をたたく音が聞こえてくる。
あれは、あれは、オオアカゲラではないか!胸にみえる黒い縦斑に、胸から下の広範囲にかけて広がる赤い色。
間違いない、オオアカゲラのメスだ。
彼女はかなり高い場所で採餌している。もしかしたら、降りてきてもっと近づいて来やしまいか。
そんな期待をしつつ静かに見守るが、彼女は少しづつ私たちから離れ、やがてどこかへ消えてしまった。
それにしても、幸運であった。この日のうちに、見たかったキツツキ2種を見事に拝むことができた。
その後、何度も似たようなキツツキに出会うが、どれも普通のアカゲラであった。
今回は誠に、H氏の案内があってこその収穫である。一人ではこの様な雪の厚いところには訪れなかったであろう。
そのようなわけで、西岡公園は私にとってとても実りのある場所となった。